ナイブズ単体視点の掌編です。 自己認識の歪みと孤独感を描いたキャラクター解釈作品でよろしくお願いいたします。


鏡を見つめながら、 「本当の自分の姿はこれなんじゃないか」 何度もそう問いかけた。

テスラを目にして気を失った後、目覚めて最初に認識したのは、自分がもう人間の姿をしていないということだった。

トカゲ―― あるいは太古の地球に存在し、すでに絶滅した恐竜に似た顔を、何度も撫で、引っ掻き、引き剥がそうとした。

でも何も変わらなかった。

口を大きく開けると、鋭い歯が見えた。もし自分の知覚に異常が生じていて、この姿がただの幻覚だというなら、これほどまでに精巧な像を想像で作り上げることはできないはずだ。

だから、もうバスルームに閉じこもって、鏡をいじめるのはやめて、外に出なければならなかった。

恐る恐るバッシュとレムに、自分の様子を尋ねたら、 「少しやつれただけで、何も変わってない」と返ってきた。

その言葉に、また疑いが湧いた。 ――もしかして、自分が狂っているんじゃないか?

CCTVに映った自分の姿を見て、ようやく理解した。自分だけに、あのように見えていたということを。

皮肉だよね。自分は人間にはなれない。ただのインディペンデントだってことは、とうに分かっていたはずなのに。

なのに今になって、はっきりと「目覚めさせられた」。

じゃあ、どうして? なぜバッシュは今でも人間のような姿のままなの? 僕たちは僕たちだけで、どこにも属せないのに、 見た目が似てるってだけで、 バッシュはあっさり人間の社会に溶け込めるの?

何のためらいもなくレムと接するバッシュを見るのが、憎くて、たまらなくて、「君も本当は喋るトカゲにすぎないんだ」って、いつか言ってやりたくなった。

いや、違う。

口を固く閉ざす。

たとえそれが真実だとしても、バッシュは人間が自分を愛すると信じているから。